調の関係やコードの構成、裏コードやセカンダリードミナントなどなど…
これらの用語をなんとなく理解している方、また聞いたことが無い方もいるでしょう。
この記事で解説する『五度圏(英:circle of fifth)』は、それら様々な知識を、目で見て簡単に理解・引き出すことができるツールです。
五度圏を上手く活用すれば、演奏のアイデアや作曲の効率、また幅がぐっと広がります。
この記事では、五度圏とはどんなものか、また6通りの使い方を紹介します。
五度圏表とは
五度圏表とは、CからBまで12の音を時計のように配置した表です。12時の方向のCを基準に、右に行くと完全5度づつ音が上がっていきます。
その音を主音とする調の調号や、どの音に『#』『♭』が付いているか、また平行調まで一目で確認できます。
例えば、「ト長調(Gメジャーキー)には調号として一つ♯が付き、平行調はEmである」ことがわかります。
↓Cから右回りでオクターブ上のCまで
五度圏の使い道は、こうした調や調号の判定だけにとどまりません。
使い方を工夫すれば様々なことが一目でわかる便利アイテムとなります。
2章では、五度圏の6つの使い方を詳しく解説いたします。
五度圏を知っているメリット
ある程度の音楽の知識はあっても、それを引き出すことができるかはまた別の話です。
例えば、「キーFのダイアトニックコードは?」「Gのトライトーンにあたる音は?」「キーCの属調の音階は?」などと聞かれてもすぐに答えるのは難しいですよね。
何かの楽器に傾倒している方であればそれらに紐づけながら答えることができそうですが、楽器をしていなかったり、楽器を始めたばかりであるとやはり難しいものです。
五度圏を活用すれば、それらを考えることなく引き出すことができます。
『5度』と『12音』
ピアノを見ればわかる通り、ドからドまでの1オクターブは12音でできています。
5度圏でも、5度ずつ音を変えていくと不思議と12音で元の音に戻ることがわかります。
この12音は、もともと紀元前600年にピタゴラスによって作られたピタゴラス音律がもとになっています。
音の概念が不明確だった当時、どのようにして音を見つけだしたかというと、2つの同じ長さ・同じ素材の弦(=まったく同じ音が出る)のうち一方を徐々に短くし心地よい音を探していくといったもの。
もととなる弦の音をC(ド)とすると、ちょうど一方の弦の長さが2/3となる部分で調和するのですが、その音がG(完全5度上の音)だったわけです。
同じ順序で、Gから5度上のD、Dから5度上のA…と。
すると、ちょうど12音で元の音に戻るという仕組みが発見されました。
現在僕らが使っている音律(平均律)は、正格な1オクターブを12音で等分したものなんだよ!
五度圏の6つの使い方
5度圏は1章で簡単に解説したような使い方だけなく、様々な使い方ができます。
以下で詳しく解説していきます。
使い方1:調や調号を確認する
楽譜には調号がついており、楽曲の調(キー)を示しています。
Cメジャーキーの楽曲は調合がつきません。
その他のGやBメジャーキー…と変わってくると、それぞれ#や♭が付いたりします。
五度圏を利用すると、調から調合の数を、調合から調を簡単に判別することができます。
この五度圏では、Cを基準に右に行くと(キーGになると)#が一つ、左にいくと(キーFになると♭)が一つきます。
例えば、調がAであれば『#が3つ』つき、キーD♭であれば『♭が5つ』つきます。
使い方2:並行調など近親調を確認
先ほどキーCと表現しましたが、実際はキーCメジャー。メジャーキーを指します。長調のことですね。
ここから短3度下のマイナーキー(短調)のことを、並行短調と呼びますが、同じスケールをしている特徴があります。
キーCが白鍵のみで弾けるように、キーAmも白鍵のみで弾けます。
上の例のように、主軸となる調(この場合Cメジャー)を主調と呼び、並行調のような関係性の近しい調(キー)を近親調と呼びます。
他にも属調や下属調なども近親調に分類されます。
- 並行調:長調からみた短3度下の短調。短調からみた短3度上の長調
- 属調:主調から完全5度上の調(#が一つ増える、あるいは♭が一つ減る)
- 下属調:主調から完全4度上の調(♭が一つ増える、あるいは#一つ減る)
五度圏の中から主調を一つきめると、ちょうど下のマイナー表記が並行調、右隣が属調、左隣が下属調といった具合で、簡単に関係性を確認することができます。
使い方3:ダイアトニックコード・スケールの確認
任意のキーのダイアトニックコードを簡単に確認できます。
まず、主音をきめて下図の様に扇状にマークします。
これで、I~VIの和音が導出できました。
一般的な5度圏ではVIIのコードは記載されていないので、VIコードの全音上の『m7-5』コードを付加しましょう。
ダイアトニックコードそれぞれのルート音はスケール音ですので、下の例ではC~BまでのCメジャースケールまで確認できたことになります。
使い方4:コードの機能を確認する
調性音楽では、それぞれのコードに『トニック』『サブドミナント』『ドミナント』いずれかの機能があります。
5度圏では、ダイアトニックコードの各機能を一眼で把握できます。
Cメジャーキーのコード機能で考えてみましょう。
主音Cの列が『トニック』、右隣の属音Gの列がドミナント、左隣の下属音Fの列がサブドミナントになります。
(IIImであるEmは、場合によってトニックあるいはドミナントの機能になります。)
- トニック:C,Am,(Em)
- サブドミナント:F,Dm
- ドミナント:G,Bm-5,(Em)
使い方5:コードの構成音を導く、確認する
例えば、ディミニッシュコードやオーギュメントコードなど、普段使い慣れないコードの構成音ってなかなか答えにくいですよね。
12音が等間隔で並ぶ五度圏なら、これらのコード構成音も簡単に見つけることが出来ます。
例えば、Cディミニッシュコードを見つけたい場合は、Cを起点に綺麗な四角形になるよう左回りで線を引きます。その点が構成音です。
Cオーギュメントを見つけたい場合は、Cを起点に綺麗な三角形になるよう線を引きます。
ディミニッシュ(セブンス)コード
オーギュメントコード
使い方6:ノンダイアトニックコードの関係性を確認する
コード理論を学んでいくと、裏コードやセカンダリードミナントのような用語を耳にし、よく扱います。
これらノンダイアトニックコードの関係性を発見する意味合いでも五度圏を利用することができます。
例えば裏コード。ドミナントセブンスコードにあるトライトーンの響きをもつ、代理となるコードですが、G7の裏コードはなんでしょう?
五度圏のGから、ちょうど反対のD♭(あるいはD♭7)が裏コードです。
セカンダリードミナントは、いずれかのダイアトニックコードに対するドミナントコードです。
ドミナントコードはあるコードの5度上となりますので、五度圏で見ると右隣のコードに当たります。
例えば、キーCのVであるGに対するセカンダリードミナントは、その隣D(あるいはD7)になるわけです。
裏コード
セカンダリードミナント
五度圏を丸暗記したい方はこちらの記事をご覧ください。