【同主調転調とは】JPOPでの使われ方をヒットソングを参考に解説

執筆者: エルエミュージックセオリーでは、楽典や音楽理論の分野に関わる情報を発信しています。これらは、楽曲の分析や作曲、演奏をする上で必要な知識で、より深く音楽を理解し解釈することができます。音楽学校をでたライターにより執筆を行い、適宜情報を修正しながら運営してまいります。

同主調とは、同じ主音を持つ調を表します。
Cメジャーキー(ハ長調)の同主調といえば、Cマイナキー(ハ短調)。
Dマイナーキー(ニ短調)の同主調といえば、Dメジャーキー(ニ長調)といった関係性です。

今回は、同主調の考えを応用した同主調転調について解説していきます。
古いアニメソングや、最近のアイドルソングまで、さまざまなシーンで活用されている転調手法です。

同主調転調とは

同主調転調とは、その名の通り、曲中で同主調へ転調することです。
例えば、CメジャーキーからCマイナーキーへの転調。その反対のCメイナーキーからCメジャーキーへの転調同主調転調です。

えるるん
単純な表現になっちゃうけど、「暗い雰囲気が一気に明るい雰囲気に」「明るい雰囲気が一気に暗い雰囲気に」なるよ!

 

雰囲気が逆転する

転調にはさまざまなパターンがあります。
「CメジャーキーからDマイナーキーへの転調」や「GマイナーキーからFメジャーキーへの転調」などなど。パターンは数えきれません。

ただ、同主調転調以外の転調は全て主音が変化します。
一般的に「長調は明るい」「短調は暗い」と表現出来ますが、主音の変わる転調は「明るい暗い」では表現しきれないように感じます。

えるるん
主音という軸が変わってしまうから、「転調前に比べて転調後はこうなった」って表現しにくいよね。
その点、同主調転調は明白です。
使われる音階こそ変わりますが、主音という軸が変わらないため、短調への転調なら「暗くなった」、長調への転調なら「明るくなった」と感じやすいでしょう。

同主調は重要な音が同じため転調しやすい

「長調を短調に変える」というとなかな強引なことをしている様にも感じますが、同主調への転調は比較的スムーズです。

調を形作る音階には重要な音が4つありますが、同主調はそれらが同じなので印象は違えど構造は近しいのです。
そのため、転調は決して強引なものではありません。

音階に重要な音

  • 主音:音階の中心の音
  • 属音:主音の5度上の音
  • 下属音:主音の5度下の音
  • 導音:主音へ進もうとする音

音階、各音の詳しい解説はこちらをご覧ください。

CメジャーキーとCマイナーキーの音階で見てみましょう。

同主調で共通する音

また、属音・導音が共通しているため、同じドミナントセブンス(V7)が生まれます。

例えば、Cマイナーキーのコード進行中にG7(V7)が現れたら、『Cmコード』と『Cコード』どちらにも進行できるのです。

同主調への転調方法

同主調は非常に近い関係の調ですが、よりスムーズな転調を行うには工夫が必要です。

多くの場合で、ドミナントコードが転調のきっかけとなりますが、同主調転調でも同様です。

以下では「長調から同主短調への転調」と「短調から同主長調への転調」方法を解説します。
曲作りに答えはないので、あくまでも定番の転調方法として捉えてください。

CメジャーキーとCマイナーキーを例にあげて解説します。

長調から同主短調への転調

セクションの区切りで強引に転調

譜例1

AメロからBメロなど、セクションが移り変わる場面で一気に転調する楽曲も少なくありません。

このまま穏やかに続くかと思いきや、雰囲気が反転し、裏切り感と驚きを与えます。
コード進行の工夫によるスムーズな転調ではないため、インパクトが激しく、セクションの途中で挟まれることはあまりありません。

マイナーツーファイブワンを利用して転調

譜例2

ダイアトニックコードの『IIm7→V7』の進行(ツーファイブモーション)をとると、トニックへスムーズに解決します。

Cメジャーキーの『IIm7→V7』、『Dm7→G7』になります。
一方、Cマイナーキーの場合『IIm7-5→V7』がツーファイブモーションになるので、『Dm7-5→G7』になります。

Cメジャーキーで構成される進行の中で、Cmへの解決を想定した『Dm7-5→G7』の進行をとると、Cmに着地する違和感が薄れスムーズな転調となります。

短調から同主長調への転調

メジャーツーファイブワンを利用して転調

譜例3

先ほど、長調から同主短調に転調する際、マナーツーファイブワンを利用する方法を解説しました。
今度はその逆で、短調の中でメジャーツーファイブワンを使います。

『Dm7→G7』が来ることで、次にCへ進行する予想がしやすくなり、転調の違和感を緩和します。

ドミナントセブンスをハイブリッドコードにして転調

譜例5

先ほどのメジャーツーファイブの応用的に、ハイブリッドコードを利用した転調を見てみましょう。

『Dm7/G』を書き直すと、『G7sus4(9)』となります。
G7なので、機能的にはドミナントなのですが、3度の音が無いためフワッとした印象になります。こうした3度省略の分数コードをハイブリッドコードと言います。

加えてDm7はCメジャー由来のカードなので、Cマイナーキーの暗い雰囲気が緩和され、穏やかな雰囲気がただよいます。その穏やかさが自然にCメジャーへと進行します。

同主調転調が使われている楽曲

同主調転調が使われている楽曲をJPOPに絞って紹介していきます。

もうええわ/藤井風

Eマイナーキー→Eメジャーキー
イントロ・AメロはEマイナーキーで構成されていますが、BメロでEメジャーキーへ同主調転調しています。
転調のきっかけは『F#m/B』で、Eメジャーへの進行を予感させるドミナント(ハイブリッドコード)を使用しています。
もうええわ楽譜

LOSER/米津玄師

F#マイナーキー→F#メジャーキー
イントロからBメロまでF#マイナーキーで構成されていますが、サビでF#メジャーキーに同主調転調しています。
サビのコード進行は小室進行と言われるもので、マイナーキーっぽさもありますが、最終的にF#メジャーへと解決していますね。
ノイズの様な音で一瞬気をそらし、F#メジャーのVImへ進行しています。

めざせポケモンマスター/松本梨香

Aマイナーキー→Aメジャーキー
おなじみ、ポケットモンスターの初代主題歌です。
イントロ、AメロがAマイナーキーですが、BメロでAメジャーキーに転調しています。
BメロでAメジャーに転調した後、メロディーに入るまで2小節間のためがあり、メジャーキーの雰囲気に一気に支配され、穏やかになります。
めざせポケモンマスター楽譜