シンコペーション(syncopation:英)は、リズムに関する音楽用語で、比較的ドラマーの口からよく耳にします。
今回は、「シンコペーションとは何か」「どの様に使われるのか」を詳しく解説いたします。
後半ではJPOPでの実例を紹介しますので、頭と感覚でシンコペーションについて理解していきましょう。
シンコペーションとは
シンコペーションとは、本来あるリズムの重心をずらしたような状態を指します。例えば、音符の使い方を考え、アクセントの位置をずらすことで、重心がずれたような状態になります。
例えば、以下の音源が重心が安定した状態とします。どっしりとした印象です。
次にの音源は、重心が前にずれたように聞こえませんか?
前のめりで、勢いが生まれたようにも感じます。
2つ目のリズムも似たエイトビートですが、4拍目でシンコペーションが起こっているため、こうした重心の変化を感じます。
感覚的に感じていただきたいためにドラムのビートを例に出しましたが、シンコペーションはメロディーにも言えることです。
具体的な解説
先ほどは感覚的な話になってしまったので、より具体的に解説します。
まず、拍子の中の一つ一つの拍は、重みのある強拍と、軽い弱拍(あるいは中強拍)に分けられます。
強拍は、小節内の最初の拍に現れます。
例えば、4分の4拍子では1拍目が強拍。4分の3拍子でも1拍目が強拍です。
(4分の4拍子の3拍目は中強拍とされることがあります。)
本来は、強拍に重みを感じるべきなのですが、アクセントが変化すると弱拍に重みをつけることができます。
こうした強拍・弱拍の重い軽いのバランスが変化している状態をシンコペーションと言います。
例えば、以下のように弱拍である4拍目と、次の小節の1拍目をタイで繋げると、4拍目に重みがつきます。
強拍が一つ前にずれたような感覚です。
シンコペーションを使う意図
シンコペーションを使う意図はさまざまです。
まず、前のめりなシンコペーションを使えば楽曲に疾走感が生まれたりするなど、ノリを変化させることができます。
またジャズのような裏拍が強調される音楽ではシンコペーションのリズムが基本ですし、クラーベなどのラテンのリズムにもシンコペーションが含まれています。
ポリリズムを生み出すためにもシンコペーションが使われます。
結局は、「その音楽のグルーブを生み出すため」というのがシンコペーションの役目と言えます。
アウフタクトとの違い
全く違うのですが、よく混同されやすい言葉に『アウフタクト(弱起)』があります。
この違いについても確認しておきましょう。
まずシンコペーションは、自然な強拍の位置がずれることであり、リズムの話です。
一方のアウフタクトは、曲の頭やフレーズの頭が、手前の小節から先行して始まる(弱拍から始まる)ことを指します。
こちらはリズムというより、曲の構造に関する話です。
以下はアウフタクトで始まる例ですが、決してシンコペーションしているわけではありません。
なんとなくの理解つい言ってしまう、アウフタクトやシンコペーションといった横文字。 分かりそうでちゃんとは分からないこれらの用語。順番に理解していきましょう。 この記事では、アウフタクトの意味と、使われ方を解説していきます。 [[…]
シンコペーションの6つの作り方
音の長さや休符の使い方、演奏の方法などでアクセントの位置が変化し、シンコペーションが生まれます。
この章では、シンコペーションの作り方を以下6つのパターンに分けて紹介します。
- 弱拍と強拍をタイで繋げる
- 休符で強拍をずらす
- 音符の長さでアクセントを出す
- スラーでアクセントを出す
- 反復メロディー・コードでアクセントをずらす
- 演奏記号による指定
弱拍と強拍をタイで繋げる
弱拍と強拍をタイで繋げると、弱拍に位置に強拍が移動してきたように感じます。
上の例の通り、前のめりなリズムに感じるのではないでしょうか。
一般的に、このタイプのシンコペーションを表す際、「(リズムが)食ってる」「食う」と表現されることがあります。
休符で強拍をずらす
休符はアクセントになりません。強拍が休符になると、次の拍にアクセントが感じやすくなり、シンコペーションが生まれます。
音符の長さでアクセントを出す
長い音符にはアクセントを感じやすくなり、シンコペーションが作れます。
スラーでアクセントを出す
スラーで括られた部分は滑らかに演奏されます。
スラーの部分をフレーズとして感じやすく、その頭の音にアクセントがつきます。
拍子は、4分の4拍子のままですが、スラーがある箇所では3拍子のように感じられます。
他の楽器が4拍子をキープしていれば、ポリリズムとなります。
反復メロディー・コードでアクセントをずらす
メロディーやコードが同じリズムで反復されると、それぞれ繰り返し部分にアクセントを感じられ、シンコペーションが生じます。
演奏記号による指定
『sf(スフォルツァート)』や『>』のような強く演奏せる記号を用いて、アクセントをつける部分を奏者に指示できます。
これまでに紹介したものと違って「強い音を明確に鳴らす」ため、シンコペーションがより感じやすくなります。
まとめ
シンコペーションとは、本来あるリズムの重心をずらしたような状態を指します。
例えば、音符の使い方を考え、アクセントの位置をずらすことで、重心がずれたような状態になります。
リズムが前のめりに感じるシンコペーションは、「(リズムが)食う」と言われることもあるため、覚えておくと演奏時のコミュニケーションが円滑に進むでしょう。
シンコペーションにより、多様なグルーブ感を作れます。
様々なシンコペーションの使い方を学んで、自分の音楽に生かしてみてください。