オンコード(スラッシュコード)とは?2つの種類と使い方

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分数コードの図説

上図のように、『/』や『on』『-』と言った形で表現されたコードを分数コード(コンパウンドコード)と言います。
そのうち、『/(スラッシュ)』や『on』という形で表記されているコードをオンコード(あるいはスラッシュコード)言います。

この記事では、オンコードとはどういったコードで、どのように使われているのかを解説していきます。

ちなみに右側、算数で使う分数の形で表記されているコードをポリコードと言います。
ポリコードに関しては別の記事で解説いたします。

オンコードとは

オンコードとは、『ConG』『C/G』のように示されるコードのことで、分子部分(左)がコード、分母部分(右)がベース音を表しています。
「C/G」や「ConG」などと表記され、それぞれ「CぶんのG」「Con(おん)G」と読まれます。

オンコードをスラッシュコードということもありますし、そのまま分数コードという方も多くいます。

オンコードの図解
えるるん
上図は、「Cコードだけど、最低音(ベース音)はGで弾いてね」っていう意味になるよ!

オンコードが使われる場面

オンコードによってベース音をある程度自由に操作できるようになります。
それによって、半音や全音で動くようなスムーズなベースラインを作ったり、ベースを立ち止まらせることもできます。

例えば、「メロディをよく聞かせたいときに、ベース音を固定して比較的落ち着かせたコード進行に変える」ような意図でオンコードを使ったりしてもいいですね。

他にも、ふわっとした地に足つかないようなコードの響きを演出することもできます。

詳しくは、3章で解説します。

ギターなどはコード部分だけ弾くことも

ギターもコードを奏でる楽器ではありますが、こういった上物と呼ばれる楽器では、オンコードのベース部分を省略し、普通のコードとして弾くことがあります。

その場合は、ベース(楽器)などの低音を支える楽器が他にいる必要があります。

オンコードの種類は2つだけ

オンコードは、大きく2つの種類に分けることができます。

  • あるコードのコードトーンがベースにきたもの(転回系)
  • コードトーン以外がベースにきたもの(≒ハイブリッドコード)

転回系のオンコード

3和音、または4和音のコードの構成音のいずれかをベース音に変えた形を『転回系』といいます。
例えば、Cコードの構成音は、『ド・ミ・ソ』ですが、このうち『ミ』をベースにしたものを第1転回系、『ソ』をベースにしたものを第2転回系と順番によんでいきます。

Cコードの展開系

えるるん
Cメジャーセブンスであれば『ド・ミ・ソ・シ』。『シ』をベース音にしたものは第3転回系!

JPOPで使われている多くのオンコードはこの転回系と呼ばれる形で、ベースの動きを滑らかにする用途で使われたりします。
その逆で、ベースの音程幅を大きくしダイナミックに聴かせることもできます。

コードトーン以外がベースにきたもの(≒ハイブリッドコード)

コードトーンがベース音に来るものを『転回系』と言いましたが、中には転回系として説明がつかないコードもあります。
こういったコードは、さらに2つの考え方に分かれます。

  • 単にベース音がコードの上で動いただけ
  • ハイブリッドコード

単にベース音がコードの上で動いただけ

ベース音がコードの上で動いてオンコードの形となることもあります。
例えば、CからEmへ進む進行で、間に経過音的にベースD音を入れたいときなど。

オンコードと言えば、基本的に転回系と次に紹介するハイブリッドコードだけど、こうしたベースの動きを表現するためにオンコードの形をとることもあります。

特殊なオンコード

えるるん
C9っていうテンションコードがあったとしても、転回系の考え方でテンションをベースに持ってくることはできない。
テンションがルートに来ると、もはやCコードのようには聴こえにくく、ルートの違うコード感じるからだよ!

ハイブリッドコード

ハイブリッドコードとは、3度の音を持たないオンコードです。
転回系は『〇/△』の〇部分のコードを転回させたもので、ベース音こそ変われど、ルートは〇のままです。
対して、ハイブリッドコードは△という土台の上に〇が乗っかているイメージで、ルートは△となります。

えるるん
上に乗っかているコードをアッパーストラクチャーと呼んだりするよ。

例えば、『G/C』というコードを見てみましょう。
Gの構成音にC音は含まれないので、まずGの転回ではありません。

特徴として、3度の音を含まないためメジャーかマイナーか曖昧な響きになります。
そしてルートは『G/C』のCです。
楽譜を見れば一目瞭然ですが、ルートCにGコードが乗っかているイメージです。

ハイブリッドコードの例

ハイブリッドコードについて詳しくはまた別の記事で解説します。
今回は「こんなコードがある」程度の認識で終わらせておきましょう。

オンコードの使い方

ここまで紹介してきた転回系やハイブリッドコードが実際どのように楽曲に使われているのか、実例を交えながら解説していきます。

パターンは大きく分けて以下の3つ。

  • ベース音の動きをスムーズにする
  • ベース音を固定する
  • 浮遊感のある響きを作る

ベース音の動きをスムーズにする

ベースが半音、全音で動くようなスムーズな進行にするためにオンコード使われることはよくあります。

楽曲例(もう少しだけ/YOASOBI)

例えば、YOASOBIのもう少しだけのコード進行を見てみましょう。
下は、イントロのコード進行です。

楽譜

トニックのE♭を多く使ったコード進行ですが、オンコード使うことでベースがスムーズに進行しています。
緩やかに下っていくベースラインが推進力を生みだし軽やかさを感じさせます。

ベース音を固定する

コード進行の中でベース音を固定することで、速度間が緩やかになったり、落ち着いた雰囲気が感じられたりします。

楽曲例(涙のキッス/サザンオールスターズ)

こちらもイントロの楽譜を見てみましょう。

楽譜2

べーす音がずっとCで止まっています。
1小節目Dm/Cはハイブリッドコード、2小節目F/CはFコードの第二転回系です。

ベースがCに留まっていることで、どっしりと落ち着きのある進行となっています。

浮遊感のある響きを作る

ハイブリッドコードの、3度がない曖昧な響きを利用して浮遊感のあるコード進行を演出することもできます。

楽曲例(夏のハイドレンジア/)

秦基博作曲のドラマ主題化です。
Aメロの冒頭にハイブリッドコードが使われています。

楽譜3

1小節目G/Fは、ルートFの上にGコードが乗ったハイブリッドコードです。
2小節目C/Eは、トニックであるCコードの第一転回系です。

G/Fは、FM7(9)に近い響きですが、3度の音がないためにふわふわとした響きがします。
進行先は、トニックコード(C)ですが、ベースがの第一転回系ですので、ここにも強い解決感がなく若干の浮遊感が漂っています。

Aメロ冒頭から使われることは稀ですが、主人子の不安定な心情を感じ取ることができます。