転調とは?転調しやすい調や手法を実例で解説

執筆者: エルエミュージックセオリーでは、楽典や音楽理論の分野に関わる情報を発信しています。これらは、楽曲の分析や作曲、演奏をする上で必要な知識で、より深く音楽を理解し解釈することができます。音楽学校をでたライターにより執筆を行い、適宜情報を修正しながら運営してまいります。

「なんか盛り上がったな」「なんか雰囲気ガラッとかわったな」
曲を聴いている中で、上の様に感じた時、もしかしたら転調が行われているかもしれません。

例えば、こちらの音源。半分あたりから何だか少しだけ曇りが晴れた様な、雰囲気の違いを感じないでしょうか?

これも転調です。

転調は、楽曲を一層ドラマチックにできる作曲手法です。
この記事で転調を理解し、自在に転調を扱える様になりましょう。

転調とは

転調とは、楽曲の途中で調を転じる(変える)ことを指します。
例えば、「Cメジャーキー(ハ長調)の楽曲だが、サビはDメジャーキーになっている」様な場合は、転調をしていると言えます。

転調を理解するには、『調』の理解が必須になります。

以下では、『調』についての解説と、転調の例を紹介します。

転調で変わるのは『調』

転調は曲内で『調』を変えることです。

調とは
私たちが普段聞く音楽には、それぞれ一番落ち着く音が存在します。
ある音を「落ち着く」と感じられるのは、その楽曲がその音を中心として作られているからです。
ある音から始まるメジャースケール、あるいはマイナースケールが軸にある状態を『調(キー)』と言い、これにより中心の音を知覚できる様になります。例えば、Cから始まるメジャースケールを軸に作曲をすれば、Cメジャーキー(ハ長調)の楽曲と言え、C音に最も落ち着きを感じる状態になります。

Cメジャーキーの楽曲は、C音が中心にあり、Cメジャースケールを意識した音使いになります。
Cメジャースケール以外の音は外れた響きがするので使い方に注意が必要になります。

Dメジャーキーへと転調すると、D音が中心の状態となります。

転調のイメージ

転調にルールはない

ポピュラーミュージックにおいては、転調にルールはありません。
どこで転調してもいいし、どの調に転調しても問題ありません。

例えば、AメロはCメジャーキー、BメロはDメジャーキー、サビはFマイナーキーでも曲が成立していれば問題ありません。

ただし、『CメジャーキーからF#メジャーキーへの転調』など関係の遠い調への転調は、強い違和感を与えてしまうので計算して扱う必要があります。

反対に、スムーズに転調しやすい関係の近しい調も存在します。
次の章では、転調しやすい調(近親調)について解説いたします。

えるるん
転調ばかりに固執しすぎて楽曲が破綻してしまっては本末転倒!

 

転調しやすい調(近親調)

転調は、転調前と後で変化する音が少ないほどスムーズにしやすくなります。
そのため、調号の数が近い調への転調は、スケール音の変化も少なくスムースです。

例えば、Cメジャースケール(調号:0)と、Fメジャースケール(調号:♭1)はスケール構成音がたった1音しか変わらないので、転調しやすいのです。

こうした、関係性が近しい調(調号の数が近い)を近親調と言い、転調のしやすい調として知られています。

以下の近親調について、それぞれ解説していきます。

近親調と言える調

これらは、5度圏で簡単に確認できます。
詳しくは、すぐ分かる5度圏表の解説をご確認ください。

5度圏でみる近親調

 

同主調

CメジャーキーとCマイナーキーは、どちらも主音がCです。
この様に、主音が同じ調どうしを同主調と言います。

同主調は調号3つ分の違いがありますが、主音が同じため近親調となります。
(メロディックマイナーを用いる場合は、スケール構成音の変化は1音のみ。)

平行調

CメジャーキーとAマイナーキーは、どちらも調号が0です。
この様に、同じ調号で表せる調どうしを平行調と言います。

例えば、Cメジャーキーからみた平行調はAマイナーキー。
Aマイナーキーからみた平行調はCメジャーキーです。

属調

Cメジャーキーの5度上の調は、Gメジャーキーです。
この様に、元とする調(主調)から5度上の調を属調と言います。

属調は、調号が#1つ分しか変わらない関係の近しい調です。

下属調

Cメジャーキーの5度下の調は、Fメジャーキーです。
この様に、元とする調(主調)から5度下の調を属調と言います。

属調は、調号が♭1つ分しか変わらない関係の近しい調です。

属調・下属調の平行調

主調に#一つがつくと属調。
主調に♭一つがつくと下属調になります。

属調・下属調の平行調は、属調・下属調と調号が変わらないため、近親調としても考えられます。

例えば、Cメジャーキーから見た属調Gメジャーキーの平行調であるEマイナーキーを近親調として転調する場合もあるのです。

 

2つの転調手法

転調は大きく分けて2つの手法があります。
曲の雰囲気や、盛り上げ方に合わせてどんな転調方法がいいか考えることができます。

以下では、2つの転調手法を、有名曲での実例を交えて解説していきます。

  • ダイレクトモジュレーション
  • ピボットコードモジュレーション

ダイレクトモジュレーション

ダイレクトモジュレーションは、突然強引に転調を行う方法です。
スムーズさに欠ける一方、転調したことが明快で、インパクトがあります。

最後のサビで半音上に転調する様なケースがよくありますが、これがまさにダイレクトモジュレーションです。
「転調した感覚」がよくわかり、さらなる盛り上がりを感じます。

楽曲例-群青/YOASOBI

群青の転調部分の楽譜

メロディーがリードして、B♭メジャーキーからBメジャーキーへとダイレクトモジュレーションしています。

ピボットコードモジュレーション

転調前のキーと、転調後のキーで共通するコードをピボットコードと言います。
ピボットコードモジュレーションは、ピボットコードを用いて行う、スムーズな転調方法です。

下の例では、CメジャーキーのVIVが、転調後のDメジャーキーのVIVとしても機能しています。
これがピボットコードによる転調です。

ピボットコードの譜例

楽曲例-きらり/藤井風

きらりの楽譜

元々は、Dメジャーキーの楽曲ですが、BメロでFメジャー(Dマイナーキー)へと転調しています。

Bメロ冒頭の『Gm7』がピボットコードとなり転調しているのです。
『Gm7』Dメジャーキー上のサブドミナントマイナーですが、FメジャーキーのIIm7としても機能しています。

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