私たちがよく耳にする楽曲の大半部分はダイアトニックコードで構成されています。
ダイアトニックコードはその調性内で安定的に扱えるコードですが、それと対比するような語感を持つ言葉に『ノンダイアトニックコード』があります。
この記事では、ノンダイアトニックコードがどういったものを指すのか。また、どのように扱えばいいのかを解説していきます。
ノンダイアトニックコードとは?
ノンダイアトニックコードとは、通常のダイアトニックコード以外のコードを指します。
ダイアトニック以外のコードと言えば、無数に考えられるため扱いやチョイスが難しそうに感じますが、いくつかの理論を覚えればおのずと導きだせるようになります。
また、ノンダイアトニックコードは、ダイアトニックスケール外の音を構成音に持つため、楽譜では臨時記号がつきます。
とはいえ無作為ではない
「ダイアトニックコード以外」と言い切ってしまうと、無限なパターンが考えられてしまいます。
そうなると、さすがに調性音楽として機能しなくなるような無理なコードも現れます。
そのため、一般的に言われる『ノンダイアトニックコード』は、「ダイアトニックコード以外で、かつ無理のないもの」を指します。
この「無理のない」の範囲は、「音楽理論で解釈できるもの」ととらえると考えやすいと思います。
理論で解釈できないノンダイアトニックコードもある
先ほど、ノンダイアトニックコードを「音楽理論で解釈できるもの」と範囲づけましたが、現代的なジャズ音楽なんかでは、理論で解釈するのが難しいコードも現れます。
これはそもそも、「調性音楽」という枠組みから逸脱していると考えられます。
その都度その都度転調しているとすれば解釈できないこともなく、ノンダイアトニックコードいうこともできますが、そもそもここにはダイアトニックコードすら意識されていないのかもしれません。
定番のノンダイアトニックコード一覧
ダイアトニックスケール外の音が構成音に含まれるコードは基本的にノンダイアトニックコードと区別できます。
以下では、定番のノンダイアトニックコードコードを紹介します。
定番ノンダイアトニックコードの一覧
- セカンダリードミナント
- 裏コード
- リレイテッドIIm
- モーダルインターチェンジコード
- サブドミナントマイナー(メジャーキーの場合)
- オーギュメントコード
- ディミニッシュコード
セカンダリードミナント
セカンダリードミナントは、ダイアトニックコード内のあるコードを、次のコードへすすむドミナントコードに変換するものです。
例えば、キーCで考えてみましょう。
Ⅲmは当然Em。
これをAm(Ⅵm)へのセカンダリードミナントとすると、E(またはE7)とすることができます。
特によく使われるノンダイアトニックコードです。
セカンダリードミナントを一覧で確認したい方はこちらをご覧下さい。
裏コード
裏コードは、ドミナントコードの代理となるコードを指します。
例えば、キーのCのドミナントは『G7』ですが、裏コードすると『D♭7』を代わりに扱うことができます。
これは、G7に含まれるトライトーンと呼ばれる不協和な音程を、D♭7が同じように含んでいるため、G7ほどの解決感はありませんが、C(トニック)に行きたい力が生まれます。
リレイテッドIIm
前項の『セカンダリードミナント』や『裏コード』をV7とした際の、IImにあたるコードをリレイテッドIImと呼びます。
(セカンダリードミナントなどの位置によっては、リレテッドIImがダイアトニックコードと重なる場合もあります。)
モーダルインターチェンジ
モーダルインターチェンジは、簡単に言うと同じ主音を持つ別のスケールからコードを借りてくるといったものです。
これには、モードという概念の理解が必要になるのですが、これでいうとよく耳にする『キーC』は実際は『Cアイオニアンモード』と言い換えることができます。
同じ主音Cのなかにも、7つのモードがあり、モードが異なればダイアトニックコードも異なります。
- Cアイオニアンモード
- Cドリアンモード
- Cフリジアンモード
- Cリディアンモード
- Cミクソリディアンモード
- Cエオリアンモード
- Cロクリアンモード
だとえば、キーCの音楽(Cアイオニアン)にCミクソリディアンモードの♭ⅦM7のコードを借りてくる。といった具合です。
すると、キーCにない『B♭M7』を扱うことができます。
サブドミナントマイナー
メジャーキーの場合、サブドミナントはIVのメジャーコードであるはずです。
しかし、しばしばIVmのコードが使われます。
これはサブドミナントマイナーと呼ばれるコードで、メジャーキーの中では、なんとも哀愁のある響きをします。
サブドミナントマイナーは、同主短調のIVmですので、前項のモーダルインターチェンジの一種でもあります。
オーギュメントコード
オーギュメントコードは、メジャーコードの構成音のうち、5度の音が半音上がったコードです。
コード | 構成音 |
---|---|
メジャーコード | 完全1度,長3度,完全5度 |
オーギュメントコード | 完全1度,長3度,増5度 |
ドミナントコードの代わりとしてよく用いられます。
(ハーモニックマイナー、メロディックマイナーを想定したマイナーキーであれば、オーギュメントコードがダイアトニックである場合もあります。)
ディミニッシュコード
ディミニッシュコードは、マイナーコードの構成音のうち、5度の音が半音下がったコードです。
また、ディミニッシュセブンスコードは、ディミニッシュコードに減7度の音が加わったコードです。
コード | 構成音 |
---|---|
マイナーコード | 完全1度,短3度,完全5度 |
ディミニッシュコード | 完全1度,短3度,減5度 |
ディミニッシュセブンス | 完全1度,短3度,減5度,減7度 |
ディミニッシュコードはさまざまな使われ方をします。
中でも、パッシングディミニッシュはよく使われます。
パッシングディミニッシュは、全音間隔のコードを半音で繋ぐ、パッシングコード(経過和音)です。
上例の様な、上行のパッシングディミニッシュは、次のコードに対するセカンダリードミナントの代理としても機能しています。
他にも、『トニックディミニッシュ』など、ディミニッシュはさまざまな使われ方をします。
記事のおさらい
ここまでの内容をQ&A形式でおさらいしていきましょう。